わたリベ

太宰メソッドを越えて

はじめに はてなのことばに、「太宰メソッド」というものがあります。自らの個人的な好悪の感情などを「世間」や「みんな」といった大きな主語に託すことで、自分の責任は回避しつつ、発言に権威や説得力をもたせようとする手法をいい、太宰治『人間失格』の…

危害原理という信仰

はじめに 大手コンビニが成人向け雑誌の販売を取りやめるとのこと。 ファミリーマート「成人向け雑誌」の販売中止を決定 「取り扱いをやめる方針はない」から一夜明け一転 - ねとらぼ 成人向け雑誌販売 ファミリーマートも取りやめへ | NHKニュース 取りやめ…

表現規制とリベラル

はじめに 表現の自由ははてなでも度々ホットエントリーにあがる人気のテーマであり、少し検索するだけでも実に多くの記事が見つかります。しかし、では表現の自由をめぐる問題がさまざまな立場から論じられているかというと、必ずしもそうは言えません。実は…

公共の福祉とリベラル(4)

「公共の福祉」を人権に内在するものだとする考え方を説明し、これがリベラルも支持する現在の通説的な立場であると述べました。 最後にケーススタディーとして、自民党の憲法改正草案*1を見てみましょう。現行憲法中「公共の福祉」という文言が用いられてい…

公共の福祉とリベラル(3)

「公共の福祉」を人権に内在するものと捉えるかどうか、という視点を提示したうえで、まずは人権の外にあるものだとする考え方について紹介しました。 しかし、今なおこうした考え方を支持するという人はあまりいません。それは、こうした考え方が「公共の福…

公共の福祉とリベラル(2)

人権も決して無制約というわけではない。そして、その制約を論じる際に出てくるのが「公共の福祉」であるということを述べました。 「公共の福祉」の意味をめぐってはこれまでに多くの議論がなされていますが、本記事ではその詳細に立ち入らずポイントのみを…

公共の福祉とリベラル(1)

憲法は、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として保障しています。このことを規定した憲法11条を引用しておきますので、確認してください。 11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵す…

外国人の地方参政権とリベラル(2)

地方自治体レベルの参政権については、国政レベルの参政権とは異なる観点からの憲法上の要請があり、外国人にもこれを認めることができるかどうか議論の余地があるという話をしました。 最後に、この問題について自民党の改憲草案*1 がどのように考えている…

外国人の地方参政権とリベラル(1)

以前リベラルの多くは国民主権を支持していると述べましたが、地方参政権については微妙なところがあります。国政レベルの参政権が国民のみに与えられることは国民主権の原理から自然なことですが、地方自治体レベルの参政権についても同じく国民のみに与え…

外国人の人権とリベラル(2)

リベラルも判例*1と同様、基本的人権の保障は、権利の性質上国民のみを対象としているものを除き外国人にも及ぶと考えているけれど、重要なのはどのような人権がどの程度保障されるかということだ、と述べました。 一例として紹介した判例を少し詳しく見てみ…

外国人の人権とリベラル(1)

日本国憲法は第3章で基本的人権の保障について規定していますが、その表題は「国民の権利及び義務」となっています。そこでこの「国民」という文言をとらえて、「基本的人権が保障されるのは日本国民だけだ」と主張する人が、ときおり見受けられます。 しか…

国民主権とリベラル(4)

ロールズの理論の背後にあるものと、「国民主権」の意味について説明しました。 ロールズの理論の背後にある「何人も、偶然与えられたいかなる有利な条件についてであれ、これを排他的に保持する正当な根拠を有しない」という考え方を多くのリベラルは支持し…

国民主権とリベラル(3)

ロールズの提唱した正義の二原理と、それに根拠を与えた「無知のヴェール」という概念装置について説明してきました。 こうしたロールズの理論の背後にあるのは、「何人も、偶然与えられたいかなる有利な条件についてであれ、これを排他的に保持する正当な根…

国民主権とリベラル(2)

リベラルの多くは憲法前文に謳われている国民主権を支持していると述べました。ここで国民主権を支持するとはつまり、その前提として国民国家という枠組みを支持するということでもありますが、個人的には、これはリベラルとしていささか不徹底ではないかと…

国民主権とリベラル(1)

憲法前文を読んだことはありますか。以下に引用しますので、読んだことのない人はこの機会に目を通してみてください。 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全…

人権とリベラル(2)

人権には大別して自由権、参政権、社会権の3つがあるが、これらすべてが最初から認められていたわけではない。国家による不当な介入を排除しさえすれば自由競争の中で社会は健全に発展するとの考えのもと、人権はまず自由権としてスタートを切ったと述べまし…

人権とリベラル(1)

人権には大別して、自由権、参政権、社会権の3つがあります。 自由権とは、公権力による介入を排除して個人の意思決定や活動を保障する人権です。表現の自由や職業選択の自由などがこれにあたります。公権力、つまり国家による介入を拒絶するものであること…

憲法の役割とリベラル(4)

「踏絵法」という架空の法律を題材に、「憲法によって国家権力を制限し国民の権利を保障する」ということについて考えてきました。最後に1点、見落とされがちなことを指摘しておきましょう。いわゆる私人間効力の問題です。 これまでくり返し述べてきたよう…

憲法の役割とリベラル(3)

「憲法によって国家権力を制限し国民の権利を保障する」ということの理解を助けるため、「踏絵法」という架空の法律の成立を仮定し、その内容について説明してきました。 さて踏絵法施行下において踏絵検査が実施され、検査を拒否したAが起訴されました。す…

憲法の役割とリベラル(2)

世の中の多くの場面において問題とされているのは立憲的意味の憲法であり、この意味での憲法は国家権力を制限し国民の権利を保障することをその役割としている、と述べました。 さて、「憲法によって国家権力を制限し国民の権利を保障する」ということについ…

憲法の役割とリベラル(1)

「憲法の役割とはなにか」ということは単純な知識の問題にすぎず、本来リベラルとの関係で論じるような話題ではないかもしれません。しかし、傾向としてリベラルはこの点をおおむね正しく理解しているのに対し、リベラルを批判する人は必ずしもそうでないよ…

カテゴリ「わたリベ」について

「わたリベ」は、「わたしのかんがえたリベラル」の略です。 すでに述べたとおり、このカテゴリはわたしが「この程度は共有しておいてほしい」と思うような基礎知識について扱う記事のために設けたものです。最初は「基礎知識」や「憲法」といったカテゴリに…