死刑

何人殺すと死刑?

先日、ある事件の被告人が被告人質問において「3人殺すと死刑なので2人までにしておこうと思った」旨供述しているとの報道に接しました。「3人殺すと死刑なので2人までに」 新幹線殺傷、公判で被告 - 毎日新聞どうも誤解があるようなので、死刑の選択基準等…

「死刑廃止国では現場射殺」はなぜダメか

はじめに 死刑制度の存廃に関する話題で、「死刑廃止国では現場で犯人を射殺している」という類のコメントを見かけることがある。これらの多くは主張の体すらなしておらず、まともに取り合う者などほとんどいないと思っていたのだが、必ずしもそうではないよ…

今年執行された死刑について

今日午前、津田寿美年と若林一行の死刑が執行されたとのこと。 6月の神田司とあわせて、今年は3件の死刑が執行されたことになる。 そして、このうちの2件、津田と神田については、控訴の取下げによって死刑が確定したものである。つくづく異常な割合だと思う…

死刑事件と上訴

私は、以前の記事において、さしあたりわが国が目指すべきは、死刑事件における手続保障の充実である旨を述べた*1。今回は手続保障との関連で、死刑事件においては上級審での審理を必要的なものとするべきではないか、ということについて述べたい。 周知のと…

本当に「被害者の立場から」死刑存置を主張しているのか

先日の記事を書いていて、死刑存置論者の被害感情に対する姿勢について、残念に感じたやりとりを思い出したので、記しておく。平成26年4月に沖縄で行われたシンポジウムにおける、釜井景介と本江威憙とのやりとりである*1。 〇釜井氏 ……被害者の遺族の方が裁…

「普遍的な意味での被害感情」という奇妙な概念

森炎「自由刑と死刑――死刑制度肯定の立場から」(判時2266号24頁以下)を読んだ。 死刑存置論者と手続保障 表題から分かるとおり、森は死刑制度肯定の立場であり、「今日死刑制度を肯定する者が、死刑制度についてどのように考えているのか」ということが多…

判例時報の死刑問題特集

判例時報で、2号にわたって死刑問題についての特集が組まれていた。その内容と感想について、簡単に記しておく。 「特集 死刑制度を考える【上】」 『判例時報』2264号(平成27年9月21日号)が、「特集 死刑制度を考える【上】」。 死刑制度に関する平成26年…

死刑事件と手続保障

『自由と正義』66巻8号(2015年8月号)では、「死刑廃止を考える」というテーマで特集が組まれていた。掲載論文は以下のとおり。 ティム・ヒッチンズ「死刑制度に関する真剣な議論に向けて」 小川原優之「日本における死刑廃止、死刑執行停止についての議論…

量刑と被害感情

以前、死刑廃止論者は自分の愛する者を殺されても死刑に反対するのかという趣旨の問いかけに対し、はてなブックマークコメントで多くの反応が寄せられているのを見かけたのだった。 http://b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/legalnews_jp/status/5820478918…

被害者の命と加害者の命

「被害者の命と加害者の命どちらが大切なのか」 死刑廃止の主張に対して、こうした問いかけがなされることがある。 この問いは、被害者の命と加害者の命との比較衡量を迫るものである。 比較衡量は、基本的には、一方の利益を保護することによって他方の利益…

無期懲役のいま

無期懲役と仮釈放 わが国では、主刑として死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料が定められている*1。このうち懲役とは、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる自由刑であり*2、無期と有期がある*3。無期とは、刑期が終身にわたるもの、すなわち、受刑者が…

絞首刑は苦痛が少ないのか

絞首刑は苦痛が少ないとする意見を多数見かけた*1。 彼ら(の多く)によれば、絞首刑は「一瞬」で意識を失う「最も苦痛の少ない」死刑の執行方法だというのだが、本当だろうか。判断の一助として、絞首刑の残虐性について判示した大阪地方裁判所平成23年10月…