日弁連の主張はどこまで本気なのだろう

日本弁護士連合会(日弁連)は、誰もがご存知だろう。

しかし、日本弁護士政治連盟(弁政連)についてはご存知でない方も多いのではないか。かくいう私自身、弁政連とは今のところほぼ関わりのない人間であって、本来はこのような話題をとりあげるべき立場ではないのかもしれないが、本記事を見た弁政連会員の方にご教示願いたいという思いもあるので、あえて記すことにする。

 

弁政連とは、日本弁護士連合会及び弁護士会の目的を達成するために必要な政治活動及び政治制度の研究を行うことを目的とする団体である(日本弁護士政治連盟規約3条*1)。弁護士によって組織され(同5条)、弁政連現理事長の山岸憲司、前理事長の平山正剛はいずれも日弁連の会長を経験しているようだ。こうしたことからすれば、日弁連の政治的立場と弁政連が行う活動とは、かなりの程度親和的なものになると考えられる。

そして、日弁連の政治的立場は、たとえば現在各地で開催されている「集団的自衛権行使容認に反対する全国一斉行動 ~日弁連キャラバン月間~」(日弁連主催)*2などを見る限り、自民党、特に安倍政権の政治的立場とは馴染まないように思われる。

ところが、第47回総選挙(2014年12月14日施行)において弁政連が推薦し当選した議員の顔ぶれ*3を見ると、167名のうち77名が自民党所属であり、最も大きな割合を占めていることが分かる。それだけではない。驚くべきことに、弁政連は「安倍晋三」や「稲田朋美」を推薦してさえいるのだ。

前者については、自民党の当選者が圧倒的に多かったのだから、弁政連が推薦し当選した議員に占める自民党員の割合も大きくなって当然であると説明することが可能かもしれない。また、政党にこだわらずあくまでも人物本位で推薦を決めたのだという説明も不可能ではないだろう(もっとも、政党が議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であること*4に照らせば、そのような決め方は政党の意義をあまりに軽視するものではないかとの思いを禁じ得ない)。

しかし後者については、こうした弁解をすることは不可能である。周知のとおり、集団的自衛権の行使容認等に係る閣議決定を行ったのは、他ならぬ安倍晋三内閣である*5日弁連はこの閣議決定に関し、反対の意見書を提出してさえいる*6。また、これは第47回総選挙施行後の話ではあるが、稲田朋美少年法の見直しに言及したのは記憶に新しいところであり*7少年法の適用年齢引き下げにも前向きであるようだ*8。この問題に関しても、日弁連少年法の「成人」年齢引き下げに反対する意見書を提出している*9。つまり、日弁連のとる政治的立場と真っ向から対立するような人物を、弁政連は推薦しているのである。

一方で、日弁連として、集団的自衛権の行使容認や少年法の「成人」年齢引き下げに反対する。他方で、日弁連の会長経験者が理事長を務め、また規約に照らしても日弁連の政治的立場を実現するために活動しているはずの弁政連として、集団的自衛権の行使容認や少年法の「成人」年齢引き下げに前向きな人物を推薦する。このようなやり方を見ていると、日弁連の主張がどこまで本気なのか、疑わしく思えてくると言わざるを得ない*10

*1:http://www.benseiren.jp/rules.html

*2:http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2014/141220-150430.html

*3:http://www.benseiren.jp/news/vol395.html

*4:最高裁判所昭和45年6月24日大法廷判決(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/040/055040_hanrei.pdf)参照。

*5:http://www.asahi.com/articles/ASG713V37G71UTFK00Z.html

*6:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2014/140918.html

*7:http://www.sankei.com/politics/news/150227/plt1502270026-n1.html

*8:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201503/2015030500881&g=pol

*9:http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2015/150220_2.html

*10:「一部同意しかねる政策があっても、総合的な考慮の下に判断している」とでも説明するのだろうか。それは、私の目には単なる言い逃れとしか映らない。