自然権と天賦人権論

自然権と天賦人権論について、以下のようなブックマークコメントを見かけた。

id:Erorious_BIG←日英米など自然権を最上としている国々は天賦人権論も立憲主義も否定してるけど何の問題も無い。

はてなブックマーク - m-matsuokaのブックマーク - 2015年7月10日

横槍をいれるような形になるが、id:m-matsuokaさんとは以前少しやりとりをしたこともあり*1、まったく知らない間柄でもないということで、無礼をお許し願いたい。

さて、m-matsuokaさんは、自然権を最上とする国が天賦人権論を否定しているという。これは大変奇妙な主張であるように思える。自然権とはつまり天賦人権のことであり、自然権を最上としながら天賦人権論を否定するというのは自己矛盾であるからだ。

このことについては、ヴァージニア権利章典等、アメリカ諸州の権利章典を評した初宿正典『憲法2 基本権』(成文堂、第2版、2003年)の以下の記述が分かりやすいと思うので、引用する。なお、太字強調は原文で施されていたものである。脚注は省略した。

これらのアメリカ諸州の権利章典にほぼ共通して言えることは、憲法の保障する国民の諸権利が、人が「生まれながらにしてもつ(inherent)権利」として観念されていることであり、この点が上述のイギリスの諸文書と異なるところである。ここには、国家の制定する法よりも先に自然(ないし神、造物主等)によって賦与された権利、したがって、人が人である限り生まれながらにして当然にもっている権利(自然権)があり、これらは不可侵であって譲り渡すことのできないものである、とする啓蒙主義自然法思想が表れている。(同書7頁以下)

ここでは、自然(ないし神、造物主等)によって賦与された権利、すなわち天賦人権が、人が人である限り生まれながらにして当然にもっている権利、すなわち自然権であることが端的に表現されている。

以上のとおりであるから、自然権を最上としつつ天賦人権論を否定する、などということは、自己矛盾としか形容のしようがないように思う。ご主張に出典があれば、ご教示願いたい。