森友/麻生/ネット世論

麻生太郎が「森友の方がTPPより重大だと考えているのが、日本の新聞のレベル」と発言したそうだ*1。これはかつてネット上で山ほど見られた、いわゆる森友問題に些事のレッテルを貼ろうとする類の主張である。「森友問題なんかより重要な問題が」 式のアレだが、ネット上でさえこの手の主張を見かけることが稀となったこんにち、参議院財政金融委員会という責任ある発言を求められる場において、副総理兼財務大臣がこのような発言をしたのだから驚く。「ネット世論」を周回遅れで追いかける大臣というのも、なかなかぞっとしない話だ。

もっとも、麻生のこの発言には批判が集中し、翌日には訂正・謝罪に追い込まれたという*2。いまや市民の大多数が問題の重大性を認識していることの証左だろう。身内である自民党からも麻生発言に対する批判の声があがったとのことで*3、ようやくここまでたどり着いたかと感慨深い思いもある。まだまだ道半ばではあろうが、倦むことなく問題を追及し続けた関係各位の努力に感謝し、敬意を表する。

ところで、こうして周回遅れの麻生発言を見ていてふと気になったのだが、かつて森友問題を些事扱いしていたネット上の方々は、どこかで立場の転換を表明しておられるのだろうか。見たところ彼らの多くは、事態の深刻さが明らかになってきて以降、問題の重大性自体は前提としつつ、「これは財務省限りの問題である」という形で政権との切断を試みておられるようだ。安倍自身でさえ「行政の長として責任を痛感している」と述べている状況下にあって*4、かかる試みが成功するとは考えにくいが、ともあれ森友問題自体は些事でなく重大事であるとの立場に転じるということであれば、その旨表明されたほうがよいのではないか。また森友問題を些事とする声の中には「野党やマスコミは森友問題のような些事を殊更にとりあげて足を引っ張っている」という趣旨のものもあったように記憶しているが、「野党やマスコミ」がこうした声に屈し追及をあきらめていたならばこの重大問題が闇に葬られることともなりかねなかったわけであるから、こうした向きにあってはよく己を顧み、必要に応じて反省の弁を述べるということもあってよいだろう。

私は寡聞にして、森友問題を些事扱いしていた方が立場の転換なり反省なりを表明している例に接したことはないのだが、こうしたふるまいをできる誠実な方の意見には、たとえ同意できずとも傾聴する価値があると思うので、そのような論者を知っているという方があれば、ご教示いただけると幸いである。

*1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180329/k10011384101000.html

*2:https://www.asahi.com/articles/ASL3Z3G8VL3ZULFA004.html

*3:https://www.asahi.com/articles/ASL3Z6KNFL3ZUTFK03B.html

*4:https://www.asahi.com/articles/ASL3D5J2LL3DUTFK01Q.html