佐川証言プレイバック

佐川宣寿の証人喚問は証言拒否の多さばかりが取りざたされ、証言内容自体も国会を愚弄する悪質なものであったことに必ずしも注目が集まらなかった憾みがある。佐川の立件は見送られる方針であるとのことだが*1、ここで改めて佐川証言のうち私の印象に残ったものをふり返っておく。なお、佐川証人喚問のすべての尋問のテキストは、NHKのサイト*2から入手できる。 

 

最初に前提となる事実を簡単に説明する。平成29年2月24日衆議院予算委員会において、共産党宮本岳志から森友学園と近畿財務局との交渉記録の有無について問われた佐川は、次のように答弁していた。

○宮本(岳)委員 近畿財務局が昨年六月に売買契約を締結した国有地の売却に関する交渉記録も、今言ったように、あるかどうかわからないという答えでありました。

この交渉記録あるいは面会記録、これは全て残っておりますね。

 

○佐川政府参考人 昨年六月の売買契約の締結に至るまでの財務局と学園側の交渉記録につきまして、委員からの御依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした。

 

○宮本(岳)委員 いつ廃棄したんですか。

 

○佐川政府参考人 お答え申し上げます。

面会等の記録につきましては、財務省の行政文書管理規則に基づきまして保存期間一年未満とされておりまして、具体的な廃棄時期につきましては、事案の終了ということで取り扱いをさせていただいております。

したがいまして、本件につきましては、平成二十八年六月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録が残っていないということでございます。

ところがその後1年近くが経って、森友学園と近畿財務局との交渉を記録した文書は存在したことが判明する*3。以上をふまえて行われたのが、平成30年3月27日の証人喚問における宮本と佐川との以下のやりとりである。 

日本共産党 宮本岳志議員 日本共産党宮本岳志です。この森友問題、昨年2月15日の私の当院、財務金融委員会の質問から始まりました。いわばこの問題は、この質問を端緒にして私とあなたの間で争われてきたと言っても過言ではありません。

そこで聞くんですが、あなたは昨年2月24日の衆議院予算委員会で、面会等の記録は平成28年6月20日の売買契約締結をもって破棄してると、こういう答弁を私に初めてなさいました。この答弁は虚偽答弁でありましたか。

 

佐川氏 委員おっしゃるとおり、2月半ばから委員のご質問で始まったことでございまして、今のお話の6月20日をもって廃棄をしたという私の答弁は本当、財務省のちょっとここで何回かおわびしておりますように、財務省の文書管理規則の取り扱いをもって答弁したということでございまして、そういう意味で本当に丁寧さを欠いたということでございます。

申し訳ありませんでした。

平成29年2月24日の答弁は虚偽であったかと問う宮本に対して、当時の答弁は文書管理規則の取扱いをもって行ったものだとする佐川。実際に交渉記録の存否を確認し、それが存することを知りながら「存しない」と答弁したならば虚偽である。しかし当時自分が確認したのは(交渉記録の存否ではなく)文書管理規則であり、規則上破棄されることになっていることから「存しない」と答弁したもので虚偽ではない、という理屈だ。

すでに引用したとおり、佐川は平成29年の答弁において、「昨年六月の売買契約の締結に至るまでの財務局と学園側の交渉記録」という個別具体的な案件について、「委員からの御依頼を受けまして確認」したと述べている。そうである以上、確認の対象となるべきは当然交渉記録の存否であり、「確認したのは文書管理規則である」と強弁したうえで「丁寧さを欠いた」の一言をもって片づけることは許されない。さらにそうした確認の結果、佐川は「交渉記録というのはございませんでした」と断言している。仮に確認したのが(実際の交渉記録の存否でなく)文書管理規則であるというならば、確認していない実際の交渉記録の存否について本来断言することなどできないにもかかわらず「存在しない」と断言したことになる。これもまた、「丁寧さを欠いた」ですませてしまってよいことではない。

この後、宮本からの度重なる詰問に対しても、佐川はついに自らの虚偽答弁を認めることはなかった。あまりにも姑息な言い逃れであった。

 

以上、佐川証言のうち私の印象に残った部分をふり返ってみた。煩瑣になるのを避けるため1点にしぼったが、佐川証言にはほかにも多々悪質さを感じるところがあったし、自民党丸川珠代による誘導尋問や、自身で1000文字以上しゃべって佐川は9文字(「間違いございません。」)といった調子で進められた自民党石田真敏による尋問という名の演説など、尋問の側にもまじめに真相を追及する姿勢に欠けるものがあった。残念なところを挙げればきりがない証人喚問であった。証人喚問終了後、「佐川無双」などとはしゃぐ理解しがたいコメントも見かけたが、佐川による姑息な言い逃れは国会ひいては国民を愚弄するものにほかならず、真相追及の姿勢に欠ける尋問もかかる愚弄に加担するものと言わざるを得ない。

*1:https://mainichi.jp/articles/20180413/k00/00m/040/151000c

*2:https://www3.nhk.or.jp/news/special/sagawa_testimony/

*3:https://www.asahi.com/articles/ASL296H23L29UEHF00F.html