憲法の役割とリベラル(1)

憲法の役割とはなにか」ということは単純な知識の問題にすぎず、本来リベラルとの関係で論じるような話題ではないかもしれません。しかし、傾向としてリベラルはこの点をおおむね正しく理解しているのに対し、リベラルを批判する人は必ずしもそうでないように見受けられるため、基本的な前提の確認もかねて説明しておきます。

まず一口に「憲法」といっても、その概念は多義的なものであることに注意する必要があります。ここでその分類について詳細に述べるつもりはありませんが、世の中の多くの場面において問題とされているのは、立憲的意味の憲法です。これは自由主義に基づいて定められた国家の基礎法としての憲法をいうものであり、その趣旨を端的に表しているのが「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない」とするフランス人権宣言16条*1です。

このような立憲的意味の憲法においては、国家権力を制限して広く国民の権利を保障することが、憲法の役割とされます。国家権力を憲法によって制限し国民の権利を保障しようとする「立憲主義」という考え方は、安保法制をめぐる国会審議が続く中、平成27年6月4日の衆議院憲法審査会において憲法学者の長谷部恭男らが言及したのを機に広く知られるようになったので、ご存知の方も多いと思います。(続く)

*1:http://ch-gender.jp/wp/?page_id=385