安田純平さんの身代金

安田峰俊さんの記事を読みました

安田峰俊さんの以下の記事を読みました。

安田純平氏へのバッシング、いちジャーナリストとして思うこと(安田 峰俊) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

内容は、安田純平さんのこれまでの仕事などについてまとめたうえで、いま彼に向けられている批判の当否について検討するというもの。とてもよい記事なので一人でも多くの方に読んでもらいたいです。安田純平さんに「無能」「ジャーナリスト失格」などと罵声を浴びせる前にまず彼がどのような仕事をしてきたのかを具体的に知ることは、とても大切だと思います。

身代金が払われたことにしたい人が多いようですね

それにしても、安田純平さんの解放に際して身代金が支払われたことにしたい人はずいぶん多いようですね。

上記記事でも指摘されているように、本件において身代金が支払われたかどうかは現状不明です。巷間で取りざたされる「3億円の身代金が支払われた」という話の出所は在英のシリア人権監視団体ですが、これを伝える記事は「信ぴょう性は不明」という注意書きを付けています*1

安田純平さんの身代金については、今年の夏ごろに、「相手の要求額は150万ドルだが、50万ドルまで引き下げられる」というような話も出まわりました*2。今回支払ったとされるのは300万ドル(約3億3000万円)ですから、これは相手の要求額の2倍以上ということになります。こうした点をもふまえるならば、身代金支払の有無やその額といったことについてはもう少し慎重に考えられてもよいような気もするのですが、もはや「身代金3億円が支払われた」ということは確定的な真実であるかのように扱われています。

日本人の安全なんてどうでもいいのでしょうか

正直なところ、私も「身代金が支払われていたとしてもおかしくないな」とは思います。

でも、安田純平さんを批判する多くの方が拠って立つ重要なロジックの1つは、「安田純平に身代金が支払われることによって、日本人が標的とされる」というものだったのではないですか。そうであるならば、日本政府も身代金の支払を否定し、他国による身代金の支払についても信ぴょう性は不明であると報じられているのだから、そういうことにしておけばよいでしょう。

「身代金を支払ったとなれば日本人が標的にされる危険が増す」

そのように述べる一方で、不明とされている身代金の支払を確定的な事実であるかのように喧伝する。率直に言って彼らのふるまいは、「本当は日本人の安全などどうでもよく、ただ安田純平を叩くためだけにさまざまな言辞を弄している」ようにしか見えないことがあります。 

政府批判ととられた安田純平さんの発言を覚えてますか

そう言えば、安田純平さんが解放直後に応じたインタビューの中で、集中砲火に晒された発言がありましたね。NHKの元記事はすでに消えてしまっているため*3、その発言を紹介するリテラの記事から引用します*4

安田氏はNHKの直撃に「トルコ政府側に引き渡されるとすぐに日本大使館に引き渡されると。そうなると、あたかも日本政府が何か動いて解放されたかのように思う人がおそらくいるんじゃないかと。それだけは避けたかったので、ああいう形の解放のされ方というのは望まない解放のされ方だったということがありまして」と語ったのだが、この発言について、ネトウヨ連中がまたぞろ「この人、本当に恩知らず」「何様のつもり? 呆れ果てました」「日本に帰ってくるんじゃない」などと噛み付いているのだ。

安田純平「日本政府が動いたと思われるのは避けたかった」の真意! 安倍政権は本当に救出に動いていたのか|LITERA/リテラ

引用文中でも紹介されているように、「日本政府が動いて解放されたと思われることだけは避けたかった」とする安田純平さんの発言に対しては、これを政府批判だと捉えた人びとから集中攻撃が加えられました。 

しかし、前項で述べたこともふまえてもう一度虚心にこの発言を読み返すならば、別の解釈も見えてくるのではないでしょうか。そう、「日本政府が身代金を支払ったために解放されたと思われることによって、日本人が標的とされる危険が増す事態だけは避けたかった」という解釈です。そしてこの解釈は、先日行われた記者会見で安田純平さんが次のように述べていることからも裏づけられるように思います*5

今回、外務省の対応について、国として、行政として、やるべきこと、できることをやっていただいたと私は解釈している。紛争地で人質になった日本人の救出は非常に難しい。情報収集など非常に難しい中で、可能な限りの努力をこの3年4カ月の間続けていただいたと解釈している。解放の理由、きっかけは分かりませんが、日本政府の原則として、邦人保護は必ずやる。身代金を払うことは絶対にしないと。この二つが大原則だが、その範囲の中でできることをずっと探っていたと私は解釈している。

安田さん会見詳報:(10)紛争地に行くのは自己責任 - 毎日新聞

当時安田純平さんを攻撃していた方々に、いま改めてあの発言をどう解釈するか聞いてみたい気もしますね。

ともあれ

安田純平さんの立派な会見によって、多少は風向きも変わって来たようです。このままこの件がよい形で収束することを期待します。