国民主権とリベラル(2)

リベラルの多くは憲法前文に謳われている国民主権を支持していると述べました。ここで国民主権を支持するとはつまり、その前提として国民国家という枠組みを支持するということでもありますが、個人的には、これはリベラルとしていささか不徹底ではないかという気もします。

たとえば、リベラルの代表的な思想家にジョン・ロールズという人がいます。彼はその著書『正義論』において、正義の二原理と呼ばれる考え方を提唱し、政治哲学の復権を果たしました。同書が手元にないので、Wikipediaから引用しておきます*1

第一原理
各人は基本的自由に対する平等の権利をもつべきである。その基本的自由は、他の人々の同様な自由と両立しうる限りにおいて、最大限広範囲にわたる自由でなければならない。
第二原理
社会的・経済的不平等は次の二条件を満たすものでなければならない。
  1. それらの不平等がもっとも不遇な立場にある人の利益を最大にすること。(格差原理)
  2. 公正な機会の均等という条件のもとで、すべての人に開かれている職務や地位に付随するものでしかないこと。(機会均等原理)

彼がこの二原理を正当化するために用いたのが、「無知のヴェール」という概念装置です。無知のヴェールは、人種、性別、能力、家柄、容姿その他一切の自己および他者に与えられた条件を見えなくします。無知のヴェールによってそうした状態(原初状態)におかれた各人に社会のルール設定を委ねたならば、彼らは上記の二原理を採用するであろう、というのがロールズの主張でした。(続く)

*1:ジョン・ロールズ - Wikipedia参照。英文は省略。