公共の福祉とリベラル(2)

人権も決して無制約というわけではない。そして、その制約を論じる際に出てくるのが「公共の福祉」であるということを述べました

「公共の福祉」の意味をめぐってはこれまでに多くの議論がなされていますが、本記事ではその詳細に立ち入らずポイントのみを指摘します。それは、「公共の福祉」を人権に内在するものと考えるかどうか、ということです。

ある考え方は、「公共の福祉」を人権の外にあってそれを制約することのできる一般原理であるとします。たとえば、美濃部達吉は『新憲法逐条解説』において以下のように述べました*1

基本的人権は之を濫用してはならぬ。自由には責任心・自制心が必ず之に伴はねばならぬもので、自由であるからと言つて自分の欲する侭に如何なる事でも為し得るといふのではなく、他人の同様の権利及び自由を尊重しなければならぬことは勿論、公共の安寧秩序を紊乱してはならぬ。国民の基本的権利は唯此等の制限の下においてのみ認めらるるのである。

これは美濃部が憲法12条について解説した文章の一部ですが、ここでは「公共の安寧秩序を紊乱してはならぬ」という部分に注目してください。「公共の福祉」を人権の外にあるものだとする考え方は、このように「公共の福祉」を「公益」や「公共の安寧秩序」として理解するものなのです。(続く)

*1:文中の旧字については引用者において適宜改めました。