公共の福祉とリベラル(3)

「公共の福祉」を人権に内在するものと捉えるかどうか、という視点を提示したうえで、まずは人権の外にあるものだとする考え方について紹介しました

しかし、今なおこうした考え方を支持するという人はあまりいません。それは、こうした考え方が「公共の福祉」を「公益」や「公共の安寧秩序」といった抽象的な概念として捉えるものであるため、恣意的な人権制限につながりかねないのではないか、という懸念によるものです。

かわってこんにちでは、「公共の福祉」をすべての人権に内在するものだとする考え方が通説的な地位を占めています。細かい部分ではバリエーションがあるのですが、たとえば宮沢俊義は、「公共の福祉」とは人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理でありすべての人権に論理必然的に内在しているとしたうえで、権利の性質によって制約の程度が異なる(自由国家的公共の福祉と社会国家的公共の福祉)、と解しています*1

リベラルも、「公共の福祉」を人権に内在する人権相互間の調整原理として理解しています。(続く) 

*1:芦部信喜高橋和之補訂)『憲法』(岩波書店、第5版、2011年)の説明を参考にしました。