センター試験当日を狙って痴漢するのは当然

試験時間に遅れることができない受験生を狙って痴漢をしようと呼びかける輩がいるそうで。

センター試験 受験生を痴漢から守れ! | NHKニュース

私個人は心底下劣だと思いますが、しかし考えてみれば今日の社会が持て囃す「絶対的な正義/悪などない」「人の数だけ正義はある」といった類の思想(笑)から導かれる当然の帰結かもしれません。

「絶対的な正義/悪などない」のだとすれば、当然ながら痴漢についても悪だと決めつけられる謂れはありません。「人の数だけ正義はある」のならば、痴漢行為も人助けも、道義的には等価というべきでしょう。

痴漢は犯罪だから許されない? 犯罪かどうかを決めるのは多数派によって制定される法律です。それは今日の社会が持て囃す思想(笑)からすれば多数派の正義にすぎません。他者の権利を侵害する行為だから許されないという類の主張もほぼ同じです。そもそも保護されるべき権利とは何かということ自体が多数派の価値観によって決せられるものですし、その権利を具体的に保障するための法律も、上記のとおり多数派が制定するものだからです。

結局、今日持て囃されている思想(笑)からすれば、痴漢行為は特段恥じるべきものでも糾弾されるべきものでもなく、その行為が抑止されるのはただこれに対して刑罰が定められているからにすぎません。もう少しわかりやすく言い換えるなら、「悪いことだから」しないのではなく、「罰を受けるのが嫌だから」しないというだけなのです。こうした発想の手合いが、時間に遅れることができず被害を訴える可能性の低いセンター試験当日の受験生を狙って痴漢を行おうとするのは、当然のことだと言えるでしょう。

社会として一定程度「何が良くて何が悪いか」ということについての価値観を共有していないと、人びとは恥の感覚を失います。そして恥の感覚を失った人びとは、自制することがなくなり、ただ強制力を伴う法によってしか統制できなくなるでしょう。そのような社会はあまりにも浅ましいと私は思いますし、常に人びとを監視して完全な取締りを行うことなど不可能である以上、自制を期待できる社会よりはるかに治安が悪くなることも確実です。それで本当によいのかということを、もう大分手遅れの感がありますが、一度まじめに考えてみるのもよいかもしれませんね。