請求棄却の判決を「門前払い」とは言わない

まったくもってどうでもよいことではあるが、短時間のうちに二度も名前を見かけたので、これも何かの縁だと思って簡単に記しておく。

 

the_sun_also_risesという人物が、以下のようなコメントを書いていた。

この裁判が馬鹿げたものというのは同意する。この裁判は被害の証明ができず民事訴訟法上の棄却(http://goo.gl/jONmmF)=門前払いになると思う。もしかすると原告は被害証明の弱さを数の力で乗り越える作戦かもしれないな。

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この人物は「棄却=門前払い」としているが、誤りである。

 

大雑把に説明すると、判決には本案判決と訴訟判決とがある。

本案判決とは、訴訟物たる権利または法律関係の存否について判断する判決をいう。請求を理由ありとして認める認容判決と、理由なしとして退ける棄却判決とがある。

訴訟判決とは、本案判決をするための要件たる訴訟要件を欠くため、訴えを不適法として却下する判決をいう。本案判決をすることなく訴えを不適法として退けることから、門前払い判決と言われることもある。

この人物が言及している今回の対朝日訴訟*1は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)等を訴訟物としており、被害(損害)の発生は不法行為に基づく損害賠償請求権の発生を基礎づける要件事実の一つである。

したがって、被害(損害)の証明ができない結果、損害賠償請求権の存在が認められないとして下されるのは棄却判決であり、これは上記のとおり本案判決である。「門前払い」ではない。

 

この人物は、チベットとネパールの区別がついていないのではないかとの指摘も受けているようだ。私はよく知らないが、探せば他にも「前科」があるのかもしれない。軽率なのか、あるいは無知なのか。ともあれ、発言を信頼しがたい人物として記憶しておく。

*1:http://www.asahi-tadasukai.jp/