外国人の地方参政権とリベラル(1)

以前リベラルの多くは国民主権を支持していると述べましたが、地方参政権については微妙なところがあります。国政レベルの参政権が国民のみに与えられることは国民主権の原理から自然なことですが、地方自治体レベルの参政権についても同じく国民のみに与えうるものと考えるべきかどうかということは、それほど簡単に結論が出せる問題でもないのです。

この点、地方公共団体もわが国の統治機構の不可欠の要素をなすものであることを考えれば、地方自治体レベルの参政権についても国民主権の原理とまったく無関係であるとは言えないでしょう。

しかし一方で、憲法地方自治についても独立の章を設けています。そしてその地方自治に関する諸規定は、住民の日常生活と密接な関連を有する地方自治体レベルの政治・行政についてはその区域の住民に任せることが適当であるとの趣旨に出たものと解されています。

そうすると、たとえ外国人であってもそこに定住し地域との緊密な関係を築くに至ったような人については地方自治体レベルの参政権を認めてもよいのではないか、という議論も出てくることになります。

この点に関連して、外国人の地方公共団体における選挙権が憲法上どのように位置づけられているかを判断した最高裁判決*1があります。同判決では、外国人の地方公共団体における選挙権は憲法上保障されているわけではないものの、法律を制定してこれを外国人に付与することも憲法上禁止されないとの判断が示されました。地方公共団体における選挙権を外国人に与えるかどうかは立法政策上の問題とされたのです。これも1つの考え方でしょう。

この問題についてのリベラルの考え方はさまざまであり、一概にこうだと言えるような状況ではありません。ただ、地方自治体レベルの参政権には、国政レベルの参政権とは異なる観点からの考慮もありうるということは押さえておいてください。(続く)

*1:最判平成7年2月28日(民集49巻2号639頁)。