自首、ではないですか

id:scopedogさんの以下の記事に接した。

2件の殺人で懲役4年なら十分な温情判決だと思うが - 誰かの妄想・はてなブログ版

義父から性的虐待を受け続けた女性が生まれた子2人を殺害した事件で地裁が懲役4年の実刑判決を言い渡したことに対してつけられたブックマークコメントを批判する内容だ。

判断をなしうるだけの情報を有していないため私自身の判決に対する評価は避けるが、一般論として2人を殺害したことは重大であるというscopedogさんの指摘は正当であると思うし、ろくに知識もない(であろう)のに判決に対して罵詈雑言を投げつけるブックマークコメントの狂乱ぶりも憂慮するべきものであると思う。ただ、記事には誤解を招きかねない点もあるように思われたので、その点についてだけ簡単にふれておきたい。

scopedogさんは、刑法66条および同法68条3号を挙げつつ、「殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役であるところ、本件判決では懲役4年が言い渡されているため、情状を酌量して減軽していると言える」とする。しかし産経の記事*1によると、本件において情状酌量はされなかったとのことだ。報道機関による法律用語の用い方などいいかげんなものであり、単に弁護側が求める執行猶予つきの判決が出なかったことをもって「情状酌量されず」などと書いている可能性もあるが、私自身も酌量減軽はされていないのではないか、と思う。懲役4年の判決が言い渡されているにもかかわらず、なぜそう考えるのか。それは、上記産経記事中に女性は自首したものであった旨が記載されているからだ。

刑の減軽には、法律上の減軽と酌量減軽があり、法律上の減軽等の操作を経てなおその最下限より刑を軽くする必要がある場合に、酌量減軽(刑法66条「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。」)が行われる。scopedogさんが記事中でふれていた心神耗弱(刑法39条2項)や、自首(刑法42条1項)等が、法律上の減軽事由にあたる。女性が自首したというのであれば、判決が懲役4年となったのは、自首したことによって法律上の減軽がなされたためだと思われる。

なお、たとえ酌量減軽が行われていないとしても、女性の事情が情状事実として量刑上考慮されていることは当然である。

*1:https://www.sankei.com/premium/news/180307/prm1803070003-n1.html