2016-01-01から1年間の記事一覧

訴訟能力回復の見込みがない者を被告人の地位にとどめおく理由はない

以前の記事でとりあげた問題について、平成28年12月19日、最高裁が判断を示した*1。詳細は直接当該記事を参照してもらいたいが、おおむね以下のような問題である*2。 被告人が心神喪失の状態にあるとき、刑訴法314条1項によって公判手続は停止される*1。この…

トランプ勝利の結果が都合よく解釈されていないか

はじめに 以下の記事を読んだ。 【現地ルポ】リベラル層の「空気」に、トランプ支持者は沈黙を強いられる 記事の内容はタイトルに尽きている。リベラルが反対の意見を抑圧しており、トランプ支持者は沈黙を強いられてきたという、選挙後よく見かける筋立てだ…

「ポリコレ」騒動について(1)

はじめに 先日、以下の記事を読んだ。 ポリコレについてブコメしたらid:kyo_juさんに特定するぞと脅された話 この記事(以下、「元記事」という。)を発端に、一部界隈で大騒ぎとなっていたようだ。個人間の諍いに首を突っ込むのはあまり気が進まないのだが…

被告人という呪縛

はじめに 先日の記事で言及した、公判手続が停止したまま長期にわたって刑事被告人の地位にとどめおかれうるという問題について。なお本記事では、刑事訴訟法を「刑訴法」と表記する。 被告人が心神喪失の状態にあるとき、刑訴法314条1項によって公判手続は…

渋谷暴動と時効

平成28年11月10日追記:元記事のリンクが切れてしまったようなので、元記事のはてなブックマークページをはっておく。 先日、以下の記事を読んだ。 はてなブックマーク - 「渋谷暴動」で警察官殺害 手配の過激派の男に懸賞金 | NHKニュース 昭和46年(1971年…

ブログのデザインを変更した

ブログのデザインテーマを「レトロポップ」から「Bordeaux」に変更した。

「押しつけ憲法」論は誰も問題にしていないのか

はじめに 「誰も問題にしていない」わけはない 「主流派は問題にしていない」という程度の意味であると解した場合 「主流派は問題にしていない」とすら考えにくい 自由民主党の使命 自由民主党の近時の動き 安倍の発言 小括 仮に「主流派は問題にしていない…

出版年の訂正

事情があって過去記事を読み返していたところ、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』(岩波書店、第5版)の出版年を誤って記載していることに気づいた。 従前は、 ×「芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』(岩波書店、第5版、2007年)」 としていたが、正しくは、 …

川崎市のヘイトデモ禁止の仮処分について

川崎市のヘイトデモ禁止の仮処分について、簡単に記しておこうと思う。 Counter-Racist Action Collective • [CRAC KAWASAKI] ヘイトデモ禁止仮処分決定書 事案の概要 本件は、川崎市の在日コリアンが集住する地域で、民族差別解消に取り組み社会福祉事業を…

井上武史の不思議な主張

不思議な主張 井上武史の以下の記事を読んだ。 憲法論議の正常化は可能なのか - 井上武史(九州大学大学院准教授) (1/2) 井上は、与党に対する「立憲主義違反」との批判に対し、その内実にまったく立ち入ることなく、このような批判は無意味であるとする。…

いかがわしさの正体

nogawamさんの以下の記事を読んだ。 歴史修正主義とレイシズムを考える: 歴史修正主義は何によってそう認定されるか 歴史修正主義的な主張とはいかなるものか、ということについて説明する記事であるが、これを読んで、私が 先日の記事で述べた、いわゆる芦…

芦田修正について

※本記事における引用にあたっては、読みやすさを考慮して表記等を改めた部分がある。 芦田修正とは何か 憲法9条の解釈にあたっては、いわゆる芦田修正が問題とされることがある。 周知のとおり、芦田修正とは、帝国憲法改正案委員小委員会が帝国憲法改正案、…

メモ:品位を欠く政治家

平成28年2月24日の中央公聴会で公述人に暴言を吐いたとして、衆議院予算委員会が同月25日、おおさか維新の会の足立康史に厳重注意すること等を決めた旨報じられている*1。 この件自体は報道に接し、問題の中央公聴会を確認するまで知らなかったのだが、「足…

緊急事態条項と押しつけ憲法論

はじめに 今夏の参院選では憲法改正が争点になる。改正の具体的な項目については不確定な部分もあるが、おそらくは緊急事態条項が俎上にのせられることになるのだろう。そこで、夏までにいくつか緊急事態条項に関する記事を書こうと思う。今回は、その制定経…

「レッテル貼り」という魔法のことば

ナチスのレッテル? 平成28年1月19日の参議院予算委員会において、福島瑞穂が安倍晋三に対する質問の中で、自民党の憲法改正草案*1第九章のいわゆる緊急事態条項について、「内閣限り(の決定)で法律と同じ効果を持つことが出来るなら、ナチスの授権法とま…

香山リカ「批判」の歪さ

香山リカ「批判」 一部界隈で、香山リカ「批判」が盛り上がっている。 香山は昨日銀座で行われた慰安婦問題での日韓合意に反対するデモへの抗議行動を行っていたところ、「批判」者は、その際の香山の表情や抗議意思の表明として中指を立てたこと等をとりあ…

条文の文言からの乖離に関する覚書

平成28年1月8日の衆議院予算委員会において、枝野幸男が安倍晋三に対して、臨時国会の件について糺していた。昨年10月半ばに、憲法53条の規定に基づく、総議員の4分の1以上による臨時国会召集の要求があったにもかかわらず、その後ついに安倍内閣が臨時国会…

今年の抱負(2016年)

年が明けた。 学生でなくなってから感じ続けていることだが、為すべきことが山積する中で、自らの専門以外の分野を修める時間を確保することはとても難しい。専門の分野でさえ、直面する問題に対処する限りにおいての調査・研究となりがちであり、視野狭窄に…