本・映画

とっつきやすい南京事件論

清水潔『「南京事件」を調査せよ』*1を読みました。 「南京事件」を調査せよ (文春文庫) 本書は、「戦争についてほとんど知らなかった事件記者」である清水が、南京事件について「調査報道」の手法で自ら調べあげた結果等をまとめたものです。 公平に言って…

「思想の自由市場」という妄執

はじめに 「思想の自由市場」について 正解は一つ、ではない 「思想の自由市場」という比喩が示唆するもの 自由市場は失敗する 「表現だけは特別扱い」でよいのか 大切でデリケートだから…… 表現は大切なのか 表現はデリケートなのか 萎縮効果について 是正…

反「死刑廃止派」のための死刑廃止論

萱野稔人『死刑 その哲学的考察』(ちくま新書、2017年)を読みました。 死刑 その哲学的考察 (ちくま新書) 死刑廃止論についての理解が浅いように思える箇所も多く、決して手放しで評価できるような本ではありませんでした。特に以下の記述などは失笑もの*1…

裁判官の育児休業取得に関する男女格差

岩瀬達哉『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』(講談社、2020年)を読みました。 裁判官も人である 良心と組織の狭間で 司法行政部門による人事システムを通じた裁判官の支配、司法と政治部門との微妙な関係、そうした中で個々の裁判官が直面する死刑や…

「本人が望むなら」でごまかさない

このところ再評価の兆しがある田嶋陽子の、『愛という名の支配』(新潮文庫、2019年)を読みました。 愛という名の支配 (新潮文庫) 田嶋の代表作、と言ってよいのかどうかは分かりませんが、1992年に太郎次郎社、2005年に講談社+α文庫から刊行され、今回が3…

被告人は聖人ではない

レジナルド・ハドリン監督『マーシャル 法廷を変えた男』(2017年公開)を見た感想を記す。内容への言及を含む。 マーシャル 法廷を変えた男 (字幕版) 発売日: 2018/01/01 メディア: Amazonビデオ この商品を含むブログを見る 白人女性エリー・ストルービン…

等身大の公民権運動

エヴァ・デュヴァネイ監督『グローリー/明日への行進』(2014年公開)を見た感想を記す。内容への言及を含む。 グローリー/明日への行進 [DVD] 出版社/メーカー: ギャガ 発売日: 2016/01/06 メディア: DVD この商品を含むブログ (9件) を見る 黒人の選挙権…

テキサス、死刑、冤罪

アラン・パーカー監督『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(2003年公開)を見た。 ライフ・オブ・デビッド・ゲイル [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル 発売日: 2013/12/20 メディア: DVD この商品を含むブログを見る 女性記者ビッツィー(ケ…

京都朝鮮第一初級学校の公園「不法占拠」

私は、確定判決のある事件については、判決文を読んでその事案を把握したような気になってしまう傾向がある。この点については、常々自戒せねばならないと思っているところだ。あくまでも裁判所は事案の解決に必要な限度で事実認定等を行うにすぎない。殊に…

違憲審査権と憲法81条との関係

『憲法主義 条文には書かれていない本質』 内山奈月・南野森『憲法主義 条文には書かれていない本質』を読んだ。 憲法主義:条文には書かれていない本質 作者: 内山奈月,南野森 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2014/07/16 メディア: 単行本(ソフトカバ…

「黒人差別を扱った」映画2本

下記の2本の映画を見た感想を記す。 ノーマン・ジュイソン監督『夜の大捜査線』(1967年公開) アラン・パーカー監督『ミシシッピー・バーニング』(1988年公開) 内容への言及を含む。 まず、『夜の大捜査線』について。 夜の大捜査線 [DVD] 出版社/メーカ…

グローバリゼーションの病弊

フーベルト・ザウパー監督の『ダーウィンの悪夢』(2004年公開)を見た感想を記す。 内容への言及を多く含む。 ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント 発売日: 2007/07/06 メディア: DVD 購入: 2人 クリック:…

ある黒人兵の涙

エドワード・ズウィック監督の『グローリー』(1989年公開)を見た感想を記す。 内容への言及を多く含む。 グローリー [DVD] 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 発売日: 2010/07/28 メディア: DVD 購入: 2人 クリック: 24回 この商…