「男性差別」自体を批判すればいいのに

こんな匿名記事に接しました。

一つでも当てはまった男はブクマ禁止な!

身長やら体型やら収入やらといった項目を列挙し、1つでもあてはまるものがある男はブックマークするな、というもの。たわいないと言えばたわいないのですが、性的な偏見を固定化するものであり、感心しません。こうした偏見が社会に根づいていることを指して「男性差別はある」というのであれば、それはたしかにあるだろうな、と思います。

ところで、この記事を書いたのはいったいどのような人物なのでしょうね。もちろん匿名なので推測するよりないのですが、少なくとも反差別の立場をとる者ではなさそうです。どこまで自覚的であるかは人によって異なるでしょうが、記事で挙げられているような項目を理由として人を揶揄することに賛同するかと正面から問われれば、基本的にはノーと答えるのが反差別の立場だからです。十分に自覚的でないためこうした「ネタ」にのってしまうことはあっても、あえて自分からこうした「ネタ」を発信することは、反差別の立場をとる者であればないと思います。

これは何もこの記事に限ったことではありません。反差別の立場をとる者がいわゆる「男性差別」に関して批判されている場面を時折見かけますが、たいていの場合、そこでは反差別の立場をとる者自身が「男性差別」をしているというわけではありません。彼らはただ、反差別を掲げながら「男性差別」に関しては黙認しており「ダブスタ」だ、として批判されているのです*1

考えてみればこれは当然のことです。反差別の立場をとる者は、そのような立場をとる以上、どのような種類のものであれ、差別的な側面を有する行いや状況等を積極的に肯定したりはしません。それは「男性差別」についても同様であり、少なくとも積極的に「男性差別」を行う割合は、むしろいわゆる「普通の」人よりもはるかに小さいでしょう。

ところが、実際に「男性差別」が云々されるのは、ほとんど反差別(あるいはフェミニズム)の「ダブスタ」 を糾弾する文脈においてのみです。「男性差別」それ自体*2に対してはまともに声を上げず、「男性差別」に対する反差別(あるいはフェミニズム)の単なる不作為を攻撃することに終始している昨今の状況を見るにつけても、彼らは「男性差別」などどうでもよく、単に反差別(あるいはフェミニズム)に反発したいだけなのだろうな、と思わざるを得ないのです。

*1:なお私は、本当にそのように言えるかどうか疑わしい場合が多いと思っています。

*2:それはおそらく今回の記事も含め多くの場合反差別の立場をとる者自身によってなされたものではないでしょう。