緊急事態条項と押しつけ憲法論

はじめに 今夏の参院選では憲法改正が争点になる。改正の具体的な項目については不確定な部分もあるが、おそらくは緊急事態条項が俎上にのせられることになるのだろう。そこで、夏までにいくつか緊急事態条項に関する記事を書こうと思う。今回は、その制定経…

「レッテル貼り」という魔法のことば

ナチスのレッテル? 平成28年1月19日の参議院予算委員会において、福島瑞穂が安倍晋三に対する質問の中で、自民党の憲法改正草案*1第九章のいわゆる緊急事態条項について、「内閣限り(の決定)で法律と同じ効果を持つことが出来るなら、ナチスの授権法とま…

香山リカ「批判」の歪さ

香山リカ「批判」 一部界隈で、香山リカ「批判」が盛り上がっている。 香山は昨日銀座で行われた慰安婦問題での日韓合意に反対するデモへの抗議行動を行っていたところ、「批判」者は、その際の香山の表情や抗議意思の表明として中指を立てたこと等をとりあ…

条文の文言からの乖離に関する覚書

平成28年1月8日の衆議院予算委員会において、枝野幸男が安倍晋三に対して、臨時国会の件について糺していた。昨年10月半ばに、憲法53条の規定に基づく、総議員の4分の1以上による臨時国会召集の要求があったにもかかわらず、その後ついに安倍内閣が臨時国会…

今年の抱負(2016年)

年が明けた。 学生でなくなってから感じ続けていることだが、為すべきことが山積する中で、自らの専門以外の分野を修める時間を確保することはとても難しい。専門の分野でさえ、直面する問題に対処する限りにおいての調査・研究となりがちであり、視野狭窄に…

わが国における法令違憲判決まとめ

本記事について 尊属殺重罰規定事件 薬事法距離制限事件 議員定数不均衡事件(昭和51年) 議員定数不均衡事件(昭和60年) 森林法共有分割制限事件 郵便法免責規定事件 在外邦人選挙権制限事件 非嫡出子国籍取得制限事件 非嫡出子法定相続分規定事件 女子再…

今年執行された死刑について

今日午前、津田寿美年と若林一行の死刑が執行されたとのこと。 6月の神田司とあわせて、今年は3件の死刑が執行されたことになる。 そして、このうちの2件、津田と神田については、控訴の取下げによって死刑が確定したものである。つくづく異常な割合だと思う…

左折の改憲と現実主義

はじめに 少し前に、左折の改憲論(新9条論)というものに関する記事をいくつか読んだのだった。 左折の改憲論とは要するに、こういうことらしい。現行の憲法9条からすれば、自衛隊は違憲のはずである。(違憲のはずの)自衛隊の存在を容認しつつ9条を奉ずる…

死刑事件と上訴

私は、以前の記事において、さしあたりわが国が目指すべきは、死刑事件における手続保障の充実である旨を述べた*1。今回は手続保障との関連で、死刑事件においては上級審での審理を必要的なものとするべきではないか、ということについて述べたい。 周知のと…

記事の統合について

本ブログでは、内山奈月・南野森『憲法主義 条文には書かれていない本質』という書籍を紹介する記事と、同書中で述べられている違憲審査制についての説明を批判する記事とを公開していた。 しかし今般、これらをそれぞれ独立の記事として公開する意義はない…

訂正勧告と大学教員のあり方などについての雑感

はじめに 以下の記事とそれに対するブックマークコメントを読んだ。 「安倍はやめろ」「学長やめろ」で停職3ヶ月についての見解 on Strikingly はてなブックマーク - 「安倍はやめろ」「学長やめろ」で停職3ヶ月についての見解 on Strikingly 記事によれば、…

本当に「被害者の立場から」死刑存置を主張しているのか

先日の記事を書いていて、死刑存置論者の被害感情に対する姿勢について、残念に感じたやりとりを思い出したので、記しておく。平成26年4月に沖縄で行われたシンポジウムにおける、釜井景介と本江威憙とのやりとりである*1。 〇釜井氏 ……被害者の遺族の方が裁…

「普遍的な意味での被害感情」という奇妙な概念

森炎「自由刑と死刑――死刑制度肯定の立場から」(判時2266号24頁以下)を読んだ。 死刑存置論者と手続保障 表題から分かるとおり、森は死刑制度肯定の立場であり、「今日死刑制度を肯定する者が、死刑制度についてどのように考えているのか」ということが多…

判例時報の死刑問題特集

判例時報で、2号にわたって死刑問題についての特集が組まれていた。その内容と感想について、簡単に記しておく。 「特集 死刑制度を考える【上】」 『判例時報』2264号(平成27年9月21日号)が、「特集 死刑制度を考える【上】」。 死刑制度に関する平成26年…

ブログのデザインを変更した

ブログのデザインを「Handwriting」から「レトロポップ」に変更した。

テキサス、死刑、冤罪

アラン・パーカー監督『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(2003年公開)を見た。 ライフ・オブ・デビッド・ゲイル [DVD] 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル 発売日: 2013/12/20 メディア: DVD この商品を含むブログを見る 女性記者ビッツィー(ケ…

死刑事件と手続保障

『自由と正義』66巻8号(2015年8月号)では、「死刑廃止を考える」というテーマで特集が組まれていた。掲載論文は以下のとおり。 ティム・ヒッチンズ「死刑制度に関する真剣な議論に向けて」 小川原優之「日本における死刑廃止、死刑執行停止についての議論…

私の無力

ある記事へのブックマークコメントで、自分が生まれる前に起こった出来事について謝るということの意味について過去記事を紹介した*1ところ、id:enderukuさんより以下のようなコメントをいただいた*2。 身勝手な発言だなぁ。どうせ中韓がやった事に対しては…

憲法学者の無力

閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会の名簿に芦部信喜の名があることを知った。 昭和50年、当時の首相三木武夫が、はじめて8月15日に靖国神社を参拝した。このとき三木は、私人として参拝することを表明し、公用車を用いず、記帳の際にも「内閣総理大臣」…

窃盗症(クレプトマニア)と定職の確保

日本弁護士連合会編『日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題〈平成24年度研修版〉』(第一法規、2013年)に収められている竹村道夫「窃盗癖の概念と基礎――臨床と弁護活動の協力について――」を読んだ。 日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題[平成24年度研修版]…

自然権と天賦人権論

自然権と天賦人権論について、以下のようなブックマークコメントを見かけた。 id:Erorious_BIG←日英米など自然権を最上としている国々は天賦人権論も立憲主義も否定してるけど何の問題も無い。 はてなブックマーク - m-matsuokaのブックマーク - 2015年7月10…

窃盗症(クレプトマニア)について

はじめに 以下の記事を読んだ。 摂食障害の万引き、治療と刑罰のどちらなのか / 永田利彦 / 精神科医 | SYNODOS -シノドス-摂食障害と万引きとの関係が注目されるのは喜ばしいことだ。 私は「摂食障害の部分症状としての万引き」を特に窃盗症(クレプトマニ…

半年を振りかえって

1年も半分が終わろうとしている。 年始に述べた抱負のうち、曲がりなりにも実践できているのは「丁寧な仕事をする」ことくらいであり、「他業種との交流」「若者との交流」を深めることはほとんどできていない。 ここ1か月ほどは、「丁寧な仕事」をできてい…

京都朝鮮第一初級学校の公園「不法占拠」

私は、確定判決のある事件については、判決文を読んでその事案を把握したような気になってしまう傾向がある。この点については、常々自戒せねばならないと思っているところだ。あくまでも裁判所は事案の解決に必要な限度で事実認定等を行うにすぎない。殊に…

「自由には責任が伴う」

自民党の稲田朋美が、集団的自衛権の問題について違憲かどうかの議論を継続することに意味がないという趣旨の発言をしたそうだ。その理屈は以下のようなものだ。 一見明白に違憲というとき以外は、日本の存立にかかる安全保障については、国会と内閣に任され…

安倍首相の「靖国参拝」観

新しい国の靖国参拝観 安倍晋三『新しい国へ 美しい国へ 完全版』(文春新書、2013年)を読んだ。 新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903) 作者: 安倍晋三 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2013/01/20 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 2回 この…

約70年越しで実現した平等

横田啓子のベアテ・シロタ・ゴードンに対するインタビュー「私はこうして女性の権利条項を起草した」(井上ひさし・樋口陽一編『『世界』憲法論文選』に収録のもの。初出は『世界』1993年6月号)を読んだ。周知のとおり、ベアテ・シロタ・ゴードンは憲法草案…

カテゴリーの新設等

新たに「死刑」のカテゴリーを設けることにした。 これに伴って、以下の4記事はカテゴリーを変更した。 絞首刑は苦痛が少ないのか - U.G.R.R. 無期懲役のいま - U.G.R.R. 被害者の命と加害者の命 - U.G.R.R. 量刑と被害感情 - U.G.R.R. また、過去記事につい…

報道と法律用語

小説のドラマ化中止裁判でNHKが控訴したという朝日新聞デジタルの記事を読んだ。事件自体に興味はないが、記事中にある以下の表現が気になった。 4月28日に東京地裁であった判決では、「(原作者から)脚本の承認がされていない以上、許諾契約が成立し…

安倍を呼び捨てにしたのは誰か

本記事については、一応「デマ・誤情報」のカテゴリに分類したが、現時点(本記事公開時点)では疑惑にとどまることを付記しておく。どなたかの正確な検証を俟つものである。 昨日横浜で行われた集会「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会~戦争・原発・…